パソコンや車両、機械設備など、高額な備品を購入した際、その支払額のすべてをその年の経費にできるわけではありません。
会計の世界には「減価償却」という考え方があり、長期間使用する資産については、その使用期間(耐用年数)に応じて分割して経費化するルールが定められています。
一方で、購入金額によっては一括で経費にできたり、数年で均等に償却できたりする特例も存在します。
これらの判断基準を誤ると、税務調査での指摘や、意図しない税負担の増加を招く原因となります。
この記事では、減価償却の基本的な仕訳方法から、一括経費にできるケースの判断基準、実務で間違いやすいポイントについて解説します。
減価償却の基本仕訳
減価償却とは、時間の経過や使用によって価値が減少する資産の取得価額を、一定の期間に割り振って費用とする手続きです。
仕訳方法には「直接法」と「間接法」の2種類があり、会社の管理方針によって選択します。
- 直接法は、資産の勘定科目から直接金額を減らしていくため、現在の未償却残高が一目でわかるのが特徴です。
- 間接法は、資産の取得原価を維持したまま、これまでの償却額を累計額として別建てで表示します。
中小企業の会計実務では、資産の元の値段が帳簿上に残る間接法が多く採用されています。
どちらの方法を選んでも、損益計算書上の「減価償却費」の額は変わりませんが、貸借対照表の見た目が異なる点を理解しておく必要があります。
資産計上か経費かの判断基準
備品を購入した際、それを「消耗品費」として一括経費にするのか、それとも「資産」として計上し減価償却を行うのかは、主に取得価額によって判断されます。
この判断基準には以下のように100,000円、200,000円、300,000円という3つの大きな「壁」が存在します。
100,000円未満
全額をその期の経費(消耗品費など)として処理できる
100,000円以上200,000円未満
「一括償却資産」として3年間で均等償却できる
300,000円未満(中小企業の特例)
全額をその期の経費として処理できる
原則として、100,000円未満のものは、使用可能期間が1年未満であるかどうかにかかわらず、全額を経費にすることが可能です。
100,000円以上になると原則は資産計上ですが、中小企業(資本金1億円以下など)であれば、300,000円未満の資産について、年間合計3,000,000円を限度として一括で経費にできる特例があります。
この特例は「少額減価償却資産の特例」と呼ばれ、節税対策として非常に頻繁に活用されています。
ただし、この特例を適用するには、確定申告書に明細書を添付するなどの要件があるため、事務手続きの漏れに注意が必要です。
一括償却資産と少額減価償却資産の使い分け
200,000円未満の資産を購入した際、「一括償却資産」として3年で償却するか、「少額減価償却資産」として即時経費にするか、選択に迷う場面があります。
一見すると、即時経費にできる少額減価償却資産の方が有利に思えますが、状況によっては一括償却資産を選んだ方が良い場合もあります。
一括償却資産の最大のメリットは、償却資産税がかからない点にあります。
市区町村に納める償却資産税は、1,500,000円の免税点を超えると、保有する資産に対して課税されます。
即時経費にできる特例(300,000円未満の特例)を使った資産は、法人税の計算上は経費になりますが、償却資産税の計算上は申告対象に含めなければなりません。
そのため、会社の資産保有状況によっては、あえて3年均等償却を選ぶことで、トータルの税負担を抑えられるケースがあります。
目先の法人税だけでなく、保有コストも含めた総合的な視点で判断することが重要です。

実務でよくある誤りと判断のポイント
減価償却の判定において、実務上間違いやすいのが「取得価額の判定単位」と「修繕費との区別」です。
誤った判断をすると、税務調査で経費を否認されるリスクが高まります。
- セットで機能するものは、合計金額で判定する(例:パソコン本体とモニター)
- 既存の資産の価値を高める支出は「資本的支出」として資産計上する
- 単なる現状回復のための支出は「修繕費」として経費にする
例えば、1台80,000円の机を4台購入した場合、1台あたりは100,000円未満ですが、これらがセットで使用される性質のものであれば、合計の320,000円で判定しなければならない場合があります。
また、古い建物のリフォームや機械の修理を行った際、それが単なる故障の修理なのか、それとも機能を向上させる改造なのかによって処理が分かれます。
機能を高めたり寿命を延ばしたりする「資本的支出」に該当する場合、修繕費として一括経費にすることはできず、本体の資産に加算して減価償却を行う必要があります。
この区分は非常に判断が難しく、金額も大きくなりやすいため、実務上最もトラブルが起きやすい箇所です。
減価償却を正しく管理するために
減価償却は、一度処理を決めると数年にわたって影響が続くため、最初の判断が極めて重要になります。
固定資産台帳を整備し、取得日、取得価額、耐用年数、償却方法を正確に記録し続けることが、健全な財務管理の基本です。
特に中古車などを購入した際は、新車よりも短い期間で償却できるため、高い節税効果が期待できます。
しかし、耐用年数の計算式を間違えると、過大に経費を計上してしまうリスクがあります。
購入前に「いくら経費にできるか」をシミュレーションし、資金繰りへの影響を把握しておく習慣をつけてください。
正確な減価償却の計算は、会社の利益を正しく算出し、適切な納税と投資のサイクルを作るための土台となります。
資産管理のルールを明確にし、不明な点は早めに専門的な基準と照らし合わせて確認することが、無用な税務リスクを避ける唯一の道です。
投稿者プロフィール

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中小企業の経営者様の「一番身近で頼りになるパートナー」として、税務・会計を軸にしながら「お金に関する様々なお悩み」に幅広く寄り添うサービスを展開。
特に、経営者様が安心して本業に専念できる環境づくりと信頼関係の構築には定評がある。千代田区、文京区、神田地区を中心に地域に密着したサポートを提供している。
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