決算書を見ると利益は出ているのに、なぜか手元のお金が足りない。
納税の時期になると資金が苦しくなる。
融資を受けるべきか迷うが、判断する材料がない。
そんなお悩みを抱えている経営者様にとって、最初の一歩としておすすめしたいのが「資金繰り表」の作成です。

決算書は会社の「過去の姿」を映す鏡ですが、資金繰り表は「これから先のお金の流れ」を映す地図です。
来月、再来月、半年後にお金が足りるのかを見える化することで、経営の判断軸が一気に鮮明になります。
ちなみに、経営者様が見落としがちな「税金・社保・賞与」のまとまった支出は、年間でこのようなタイミングで発生します。(クリックで拡大します)

資金繰り表を作る最大の目的は、こうした大型支出に先手を打つことです。
本記事では、年間カレンダーを踏まえながら、誰でも作れる資金繰り表の手順をご紹介します。
資金繰り表と損益計算書との違い
損益計算書は、売上から費用を差し引いた「利益」を計算するものです。
会計上は売上が立った時点で計上されるため、入金がまだなくても利益として表示されます。
補足
売上として帳簿に計上された金額は、必ずしも同じ月に入金されるわけではありません。売掛金の回収サイクルが「翌月末払い」「翌々月末払い」と長くなるほど、利益と現金のズレは広がります。利益が大きく出るほど、納税のタイミングで一気に現金が流出するという現実も、資金繰りを苦しくする一因です。
これが「黒字倒産」が起きる構造的な理由です。

実際、独立行政法人中小企業基盤整備機構が運営するJ-Net21によれば、急成長期の会社では売掛金や在庫の増加によって、帳簿上は黒字でも資金繰りが追いつかず倒産に至るケースが少なくないとされています。
(参考:J-Net21(中小機構)「黒字倒産とはどのようなものでしょうか?」)
中小企業庁が公表している倒産統計でも、休廃業企業のおよそ半数が直前期は黒字だったことが示されており、利益が出ているからといって安心できる状況ではありません。(参考:中小企業庁「倒産の状況」)
一方、資金繰り表は、実際のお金の入りと出に注目します。
売上の入金タイミング、仕入や経費の支払タイミング、借入の返済、税金の納付までを時系列で並べることで、いつお金が増え、いつ減るのかが一目で分かります。

最低限の資金繰り表のフォーマット
複雑なフォーマットは必要ありません。
月初現金 + 入金 − 出金 = 月末現金、という単純な構造で十分です。
入金には「売掛金の回収」「現金売上」「借入」を、出金には「仕入の支払」「人件費」「家賃などの経費」「税金」「借入返済」「設備投資」を入れていきます。
これを月単位で12か月分並べれば、年間の資金の動きが見えてきます。

ゼロから作るのが大変な場合は、日本政策金融公庫が提供している公式テンプレートを出発点にするのが最短です。
簡易版・詳細版とも作成手順と記入例が公開されており、融資審査でも提出書類として通用するフォーマットです。
(参考:日本政策金融公庫「各種書式ダウンロード(中小企業事業)」/資金繰り表 記入例(PDF))
作成の5ステップ
- 過去3か月の実績を埋めること
- 通帳の入出金を見ながら、項目ごとに集計するだけで構いません。

- 向こう3か月の予測を入れること
- 固定費はほぼ確実に発生しますし、売上も過去の傾向から大まかな見込みが立てられるはずです。
- すでに分かっている大型支出を置くこと
- 法人税・消費税の納付月、賞与、年払いの保険料などを先にカレンダーへ書き込みます。
- 資金が不足する月を見つけること
- 月末残高がマイナスになる月はもちろん、月商の1か月分を下回る月も「危険ゾーン」として印をつけておきます。
- 不足月への対策を考えること
- 融資の検討、支払時期の調整、不要な経費の見直しなどが具体的な打ち手になります。
見落としやすい項目
資金繰り表で見落としがちなのが、消費税と法人税の納付タイミング、社会保険料、賞与、設備投資、借入金の返済元本です。
特に消費税は、利益が出ていない年でも預かった消費税を納付する必要があるため、資金繰り上の最大の落とし穴になりやすい項目です。
法人の消費税は原則として課税期間終了後2か月以内に納付期限がやってくるため、年間スケジュールに先に組み込んでおくことが重要です。
(参考:国税庁タックスアンサーNo.6609「中間申告の方法」)
また、賞与の支給時には、賞与本体だけでなく社会保険料の会社負担分(賞与額のおよそ15%)も同時に発生します。
「賞与の金額」だけでなく「賞与+社会保険料」をワンセットで資金繰り表に組み込んでおくことも重要です。

業種特性に合わせた調整
建設業のように工事代金の入金が完成後にまとまって入る業種、飲食業のように毎日少額のキャッシュが動く業種、サブスクリプション型のように月次で安定した収入がある業種では、資金繰り表に書く項目や見るポイントが変わります。

無料テンプレートを出発点にしつつ、自社の業種特性に合わせてカスタマイズしていくことで、本当に使える表になります。
資金繰表に関するQ&A
-
資金繰り表とキャッシュフロー計算書は何が違うのですか?
-
キャッシュフロー計算書は決算書類の一つで、過去1年間の現金の動きを「営業活動」「投資活動」「財務活動」に分けて記録するものです。資金繰り表は将来予測を含む経営管理の道具で、月次・週次など短い単位で更新します。前者は外部報告用、後者は経営判断用とお考えください。
-
資金繰り表は何か月先まで作るのがよいですか?
-
最低3か月、推奨は6か月から12か月先までです。納税や賞与など大型支出は数か月前から見えていないと打ち手を打つ時間がなくなるため、最低でも半年先までの見通しがあると安心です。
-
エクセルと会計ソフト、どちらで作るのがよいですか?
-
最初はエクセルで十分です。日本政策金融公庫のテンプレートが無料で使えます。運用が安定し、月次決算が早期化できる体制が整ってきたら、クラウド会計ソフトの資金繰り機能を活用するとさらに精度が上がります。
-
銀行に提出する場合と社内管理用の資金繰り表は同じでよいですか?
-
銀行提出用は日本政策金融公庫など金融機関の標準フォーマットに合わせるのが審査上有利です。社内管理用は自社の業務に合わせて項目をカスタマイズすると使い勝手が上がります。データの元は同じで、出口を2種類使い分けるイメージです。
-
資金が不足する月が見つかった場合、何から手を打てばよいですか?
-
打ち手の優先順位は、(1)入金の前倒し交渉、(2)支払の後ろ倒し交渉、(3)不要な経費の見直し、(4)金融機関への融資相談、(5)資産の売却、の順で検討します。融資は判断と実行に1〜2か月かかるため、不足月の3か月前には動き始める必要があります。
完璧を求めず、まず3か月分から
「資金繰り表を作ろう」と決意しても、最初から完璧なものを作ろうとして挫折するケースが少なくありません。
まずは3か月分でいいので、ざっくり作って毎月更新する、その習慣がつくだけで、経営判断の質は大きく変わります。
税理士小林ノブヒロ事務所では、資金繰り表の作成サポートや、融資相談も含めた総合的な資金管理のご相談を承っております。
「自社用にカスタマイズしたい」「融資の前に資金計画を整えたい」「資金繰りについて相談したい」といったご要望があれば、初回60分無料相談をご活用ください。
投稿者プロフィール

-
中小企業の経営者様の「一番身近で頼りになるパートナー」として、税務・会計を軸にしながら「お金に関する様々なお悩み」に幅広く寄り添うサービスを展開。
特に、経営者様が安心して本業に専念できる環境づくりと信頼関係の構築には定評がある。千代田区、文京区、神田地区を中心に地域に密着したサポートを提供している。
最新の投稿
コラム2026年7月17日インボイス2割特例は令和8年で終了|終了後の選択肢と簡易課税届出のタイムリミット
コラム2026年7月10日お盆休み・夏季休業の給与はどうなる?休業手当・年次有給休暇について
コラム2026年7月8日夏季賞与を支給したら5日以内に提出|賞与支払届の書き方と社会保険・源泉徴収の実務
コラム2026年6月23日【徹底解説】事前確定届出給与の必須知識と導入時のポイント
お問い合わせ
| CONTACT
弊社サービスをご検討いただきありがとうございます。
起業や税金節約、税理士に対するご希望など、ざっくばらんに何でもご相談いただけます、お気軽に世間話感覚でOKです!(*^^*)
お問い合わせ・資料請求、無料相談のご予約は、下記のフォーム・LINEまたはお電話でお気軽にご連絡下さい。
初回ご相談60分無料です!
◯平日であれば、通常は翌日までに返信させていただきます。
◯お問い合わせいただいた後、平日にもかかわらず返信がない場合は、迷惑フォルダやメールアドレスの入力ミスがないかをご確認くださいませ。


