梅雨明けも間近に控え、本格的な夏の暑さになってきました。そろそろお盆休みの日程を決める会社も多いのではないでしょうか。

お盆の時期に夏季休業を設ける会社は多いですが、特に経営者様は給与形態によっては「休業中の給与はどうなるのか」というご心配をされている方も多いかと思います。

実は、同じ「休み」でも、就業規則上の位置づけによって給与の扱いがまったく変わります。

本記事では、休業手当が必要なケースと不要なケースの違いから、年次有給休暇の活用、固定費の会計処理までを整理してお伝えしてまいります。

「所定休日」か「会社都合の休業」かで取扱いが変わります

まず押さえたいのが、その夏季休業が「もともと休みの日(所定休日)」なのか、「本来は働く日に会社の都合で休ませる(休業)」のかという区別です。

就業規則やカレンダーで夏季休業日が会社の所定休日として定められている場合、その日はそもそも労働義務がありません。

労働義務がない日には、ノーワーク・ノーペイの原則により、賃金や手当を支払う義務は生じません。

一方、本来は所定労働日であるにもかかわらず、受注減などの会社都合で休ませる場合は、後述する休業手当が必要になります。

【小林コメント】

小林税理士

ある小売店で「お盆は一斉に休むのだから、その分は従業員の有給休暇を充てればよいだろう」と考えていた経営者様がいらっしゃいました。

有給休暇は原則として本人の請求によって取得するもので、会社が一方的に充てることはできません。

つまり有給休暇を会社側から指定した日に取得させることはできないのです。

まずは夏季休業日を就業規則上どう位置づけているかを確認することが、労使トラブル防止の第一歩です。

会社都合で休ませる場合は平均賃金の60%以上の休業手当が必要です

労働基準法第26条では、使用者の責に帰すべき事由による休業の場合、平均賃金の60%以上の休業手当を支払わなければならないと定められています。

受注減や生産調整、経営判断による操業停止などは、この「会社都合」に含まれます。

計算の元になる平均賃金は、原則として休業前3か月間の賃金総額を、その期間の総日数(暦日数)で割って求めます。

このとき、基本給だけでなく残業代や通勤手当などの諸手当も含める点に注意が必要です。

なお、地震や台風などの不可抗力で、会社が最大限の努力を尽くしても操業できない場合は、休業手当の対象外と整理されます。

計画年休を使う場合は労使協定が前提です

夏季休業を、従業員の年次有給休暇を使って取得させる方法もあります。

これを「計画的付与(計画年休)」といい、労使協定を結ぶことで、年5日を超える部分について会社が取得日を計画的に割り当てられます。

従業員が自由に取得できる分として、最低5日は必ず本人の裁量に残しておく必要があります。

計画年休であれば賃金は通常どおり100%支払われるため、休業手当(60%以上)より従業員の収入保障は手厚くなります。

あわせて、年5日の年次有給休暇の取得義務への対応にもつながります。

厚生労働省のこちらの労働時間ガイドラインのPDFも併せてご参照ください。
https://www.mhlw.go.jp/new-info/kobetu/roudou/gyousei/kinrou/dl/101216_01e.pdf

【小林コメント】

小林税理士

運送業のある会社では、毎年お盆の3日間を全員一斉の計画年休として運用するよう、労使協定を整備しました。

その結果、夏季休業がそのまま年5日の取得義務の達成にもつながり、労務管理がぐっと楽になったとのことでした。

一斉付与は、繁閑の差がはっきりしている業種ほど効果が出やすい仕組みです。

従業員数の少ない会社様ほど、導入を検討すると良いと思う仕組みです。この後、当記事内で詳しく解説します。

大企業に比べて人員に余裕がない小さな会社こそ、この「計画的付与」を使うことで業務への支障を最小限に抑えながら法律を遵守できます。

小さな会社が導入すべき具体的な理由は以下の通りです。

  • 業務が止まるリスクを防げる
    • 全員がバラバラに有給を取ると、シフト管理や業務の穴埋めが難しくなりますが、会社全体、または部門ごとに一斉に休ませることで、業務への影響をコントロールできます。
  • 「有給義務化(年5日)」を確実にクリアできる
    • 法改正により、すべての企業に「年5日の有給取得」が義務付けられています。小さな会社では「忙しくて言い出せない」という雰囲気になりがちですが、計画年休にすれば会社主導で自動的に日数を消化させられます。
      参考:東京労働局:年5日の年次有給休暇の確実な取得
  • 給与を抑えて休業・福利厚生を充実できる
    • 夏季休業を単なる会社の休み(特別休暇など)にすると、会社の全額負担ですが、計画年休なら従業員の有給を充てるため、追加の休業コスト無しに100%の給与を保障できます。
  • 求人や採用でのアピールになる
    • 求人票に「夏季休暇〇日(計画年休含む)」と明記できます。年間休日数を実質的に増やす見せ方ができるため、大手企業にも負けない福利厚生としてアピール材料となります。

休業中も発生する固定費は経過勘定で正しく処理します

休業していても、店舗や事務所の家賃、リース料などの固定費は発生し続けます。とくに家賃を月をまたいで前払いしている場合は、期間に対応させて前払費用として処理し、その月の費用を正しく計上することが大切です。

経過勘定の考え方は、休業の有無にかかわらず損益を正確に把握するうえで欠かせません。

なお、休業手当も賃金に該当するため、社会保険料・雇用保険料・源泉所得税の控除対象となる点もあわせて押さえておきましょう。

【小林コメント】

小林税理士

部品加工を手がける製造業の会社で、夏場の受注減により所定労働日の一部を休日にしたことがありました。

この会社では休業手当を支給したうえで、雇用調整助成金の活用も行い、資金繰りへの影響を小さく抑えることができました。

会社都合の休業が避けられないときは、手当の支給と助成金をセットにできるかを考えてみてください。

よくあるご質問

Q. 夏季休業中に従業員が自分から有給休暇を使いたいと言ってきました。問題ありませんか。

小林税理士

本人の請求による取得であれば問題ありません。むしろ給与面では従業員側にとって有利になりますので何も問題はありません。

Q. パートやアルバイトにも休業手当は必要ですか。

小林税理士

雇用形態にかかわらず、会社都合で所定労働日を休ませる場合は休業手当の対象になります。パートだから、アルバイトだからといって手当を出さないことは労働基準法違反(第26条)となります。

Q. 休業手当は平均賃金の60%ちょうどでなければいけませんか。

小林税理士

60%は最低ラインです。これを上回る割合や100%を支給しても差し支えありません。

まとめ

夏季休業をめぐる給与や費用の扱いは、「所定休日」か「会社都合の休業」かという入口の整理で大きく変わります。

休業中も発生する家賃やリース料などの固定費は、経過勘定で正しく処理することで、その期の損益や資金繰りへの影響を正確に把握できます。

休業に伴う会計処理や資金繰り、決算への影響についてお困りの際は、税理士小林ノブヒロ事務所までお気軽にご相談ください。

当事務所では、経営者様の実務に関するご相談をZoomを活用した遠隔(オンライン・リモート)対応にてお受けしております。気になる方は遠方からでもぜひご相談ください。お待ちしております。

投稿者プロフィール

監修者 小林暢浩(税理士小林ノブヒロ事務所 代表税理士)
監修者 小林暢浩(税理士小林ノブヒロ事務所 代表税理士)
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