「先生、この時期はどうも手元のお金が心もとなくて」
夏はこうしたご相談が増えて来る時期でもあります。売上の入金はいつも通りのはずなのに、支払いだけが重なるように感じますよね。
その大きな原因のひとつが、税金の前払いです。
ある程度の規模になると、確定申告で一度にまとめて納めるほかに、年の途中で税金を前払いする仕組みが入ってきます。そして、その前払いの山が、ちょうど夏から秋に集中しているのです。
本記事では、この時期にどんな納税が来るのかをあらかじめ整理し、余裕を持った資金繰りを行っていただくための備え方をお話ししてまいります。

なぜ夏から秋に納税が集中するのか
所得税や消費税は、本来は確定申告のときに1年分をまとめて納めます。
ただし、前年の税額が一定以上になると、その年の途中であらかじめ一部を納める前払いの仕組みが加わります。これが所得税の予定納税であり、消費税の中間納付です。
この前払いの納期が、7月・8月・11月あたりに重なります。
その消費税や所得税に加えて、地方税である個人事業税も8月と11月が納期です。
つまり、売上の入金サイクルは変わらないのに、税金の支払いだけが増える月が出てくるため、資金繰りが急に苦しく感じられるのです。
7月・8月・11月に来る主な税金
夏から秋にかけて、個人事業主の方に関係することが多い税金を、時期ごとに整理してみます。ご自身に関係するかどうかは、前年の申告内容によって決まります。
7月は、所得税の予定納税の第1期があります。
前年の所得税が一定以上だった方が対象で、納期限は7月末です。従業員に給与を支払っていて納期の特例を使っている場合は、1月から6月に預かった源泉所得税の納付も7月10日にあります。
8月は、個人事業税の第1期と、消費税の中間納付が重なりやすい時期です。個人事業税については下記の記事でくわしく解説しています。
8月ごろ届く見慣れない納税通知書は「個人事業税」かもしれません
確定申告をした覚えしかないのに、8月ごろ届く「個人事業税」の納税通知書。東京都でも8月上旬から発送されるケースが一般的です。 この時期、早い方はそろそろ届いているかも知れません。これは所得税や住民税とは別に、事業所得が一 […]
消費税の中間納付も、個人事業者で年1回の方は8月末が期限で、こちらも下記の記事で取り上げています。
「消費税の中間申告」の通知が届いたら|所得税の予定納税に似た、消費税を前払いする仕組み
消費税は、直前の課税期間(前年度のことです)の確定消費税額に応じて中間納付額や納付回数が決まり、一定額を超える場合には中間申告・納付の義務が発生します。 当事務所でも「税務署から消費税の中間申告書が届いたのですが、確定申 […]
自治体によっては、住民税の納期も夏に重なります。
11月は、所得税の予定納税の第2期と、個人事業税の第2期が重なります。
夏に続いて、秋にもう一度、前払いの山が来るイメージです。
なお、これらの納期限が土日祝にあたる場合は、翌開庁日に繰り下がります。法人の場合は、決算月に応じて中間申告などの時期が変わりますので、ご自身の事業年度に合わせて確認してください。

参考:
前払いの税金は「損」ではありません
予定納税や中間納付と聞くと、「まだ確定していないのに先に払うのは損ではないか」と感じる方がいらっしゃいます。ですが、これはあくまで前払いで、その年の確定申告のときに精算されます。前払いした分はきちんと差し引かれますので、納める税金の総額は変わりません。
もし前払いした分が年間の税額よりも多ければ、その差額は還付されます。ですから、損得の問題というよりも、手元の資金が一時的に減る時期がある、という資金繰りの問題として捉えていただくのがよいと思います。いつ・どれくらい出ていくのかを知っておくことが、いちばんの備えになります。
【小林コメント】

「前払いなんて損だ」と思われる方は多いと思います。総額は変わりませんが、自由に使えると思っていた資金が一気に流出するのは少し辛いものがあります。
ただ、税制や納税の仕組みを知らないまま通知が届いてその金額に慌てるほうが、精神的にも資金繰りの面でも辛く感じると思います。
先手先手で、この時期にどれだけ出ていくのかを事前にしっかりと把握しておき、きちんと「見える化」しておくことが、ご自身の事業の安定にもつながるはずです。

資金繰りで慌てないための3つの備え
夏から秋の納税に備えるために、当事務所でお伝えしている考え方を3つご紹介します。特別なことではありませんが、これを続けているかどうかで、この時期の余裕がずいぶん変わりますので、ご参考にしていただけますと嬉しいです。
1つ目は、前年の申告書から、夏から秋の納税額をあらかじめ見積もっておきます。予定納税も個人事業税も消費税の中間納付も、基本的には前年の実績をもとに金額が決まりますので、前年の申告が終わった時点で、この夏にいくら出ていくかはおおよそ読めるのです。
2つ目は、納税用のお金の置き場を分けておくことがおすすめです。毎月の売上から少しずつ納税分を別の口座、引当金(最初から費用として考えておく)のイメージでよけておくと、納期がまとまって来ても、そこから支払えばよいので慌てずに済みます。
3つ目は、業績が下がった年には前払いを抑える方法があると知っておくことです。所得税の予定納税には減額申請という手続きがあり、第2期分については11月15日ごろまでが申請の期限です。
消費税の中間納付にも、仮決算方式という選択肢があります。下記記事を再掲しますが、こちらでもその内容に触れています。
「消費税の中間申告」の通知が届いたら|所得税の予定納税に似た、消費税を前払いする仕組み
消費税は、直前の課税期間(前年度のことです)の確定消費税額に応じて中間納付額や納付回数が決まり、一定額を超える場合には中間申告・納付の義務が発生します。 当事務所でも「税務署から消費税の中間申告書が届いたのですが、確定申 […]
いずれも、今年の業績が前年より落ちている場合に、前払いの負担を軽くできる可能性があります。
どうしても納付が難しいときは、猶予や分割を相談できる制度もありますので、放置せず早めに税務署や当事務所へご相談ください。
【小林コメント】

毎月、売上の一部を納税用によけておくことを習慣にされている方は、夏の納税期が来ても落ち着いていらっしゃいます。
一方で、通知が届いてから「こんなに出ていくのか」と気づく方は、どうしても資金繰りが苦しくなりがちです。思った以上に税金の負担は金額的にも大きいので、金額をあらかじめ想定しているかどうかで精神的にもかなり変わってきます。
少額でもよいので、早い段階から納税分を意識して、分けておくことを常々おすすめしています。

よくあるご質問
Q. どの税金が自分に関係するのか、どう見分ければよいですか。

基本的には前年の申告内容で決まります。おおまかな目安として、所得税の予定納税は前年の所得税額が15万円以上の方、個人事業税は事業所得が290万円を超えた方、消費税の中間納付は前年の消費税額の国税分が48万円を超えた方が対象です。実際には、それぞれ税務署や都道府県から通知が届くかどうかが目安になります。
Q. 前払いした分は、あとで戻ってくるのですか。

その年の確定申告で精算され、払いすぎていれば還付されます。前払いをしても納める税金の総額は変わりませんので、二重に払うわけではありませんのでご安心ください。
Q. 資金が足りず、納付が難しいときはどうすればよいですか。

業績が落ちている年なら、予定納税の減額申請や消費税の仮決算方式で前払いを抑えられる場合があります。それでも難しいときは、猶予や分割を相談できる制度がありますので、まずは早めに税務署や当事務所へご連絡ください。放置すると延滞税がかかることがあります。
Q. 備えは、いつごろから始めればよいですか。

前年の申告が終わった時点で、その年の夏から秋にいくら納税があるかはおおよそ見積もれます。年明けから春のうちに見通しを立てておくと、余裕をもって資金を準備できます。
まとめ
夏から秋は、所得税の予定納税、個人事業税、消費税の中間納付といった前払いの税金が重なりやすい季節です。これらは前払いであって総額は変わりませんが、手元の資金は一時的に減るため、資金繰りの山として意識しておくことが大切です。
前年の申告書をもとに納税額を見積もり、毎月少しずつ納税分を分けておけば、納期がまとまって来ても慌てずに済みます。業績が下がった年には、減額申請や仮決算方式で前払いを抑える手もあります。
年間の納税スケジュールの見通しや、夏から秋の資金繰りについて気になる点がありましたら、税理士小林ノブヒロ事務所までお気軽にご相談ください。前年の申告内容をもとに、いつ・いくら備えておけばよいかを一緒に整理させていただきます。
投稿者プロフィール

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中小企業の経営者様の「一番身近で頼りになるパートナー」として、税務・会計を軸にしながら「お金に関する様々なお悩み」に幅広く寄り添うサービスを展開。
特に、経営者様が安心して本業に専念できる環境づくりと信頼関係の構築には定評がある。千代田区、文京区、神田地区を中心に地域に密着したサポートを提供している。
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