「小林先生、今年は昨年より売上が落ちているのに、予定納税の通知では納税金額が去年並みなのですが合っていますか?」夏から秋にかけて、こうしたご相談をいただくことがあります。

予定納税は前年の実績をもとに金額が決まるため、今年の業績が下がっている年ほど、負担が重く感じられます。

金額の決まり方が前年ベースという点で、住民税に少し似ています

ただ、通知が届いた金額をそのまま納めるほかに、実は「減額申請」という方法もあります。これを使うか使わないかは置いておいて、知っておかれると良いと思います。

本記事では、この減額申請とは何か、誰が使えて、どう手続きするのかを、順を追ってお話してまいります。

予定納税は前年の実績で決まります

予定納税は、前年の所得税額(予定納税基準額)が15万円以上だった方が対象で、その基準額のおよそ3分の1ずつを、7月と11月に前払いする仕組みです。

金額は税務署が前年の実績をもとに計算し、通知してくれます。

ここでのポイントは、あくまで前年ベースで金額が決まるという点です。

今年の売上が下がっていても、通知される金額は前年の水準のままです。

そのため、業績が落ちた年ほど「去年と同じだけ払うのは結構きつい」と感じることになります。なお、予定納税は前払いですので、最終的にはその年の確定申告で精算されます。

源泉徴収との違い

予定納税と源泉徴収の違いがわかりにくい方もいらっしゃると思いますので、念のため違いをご説明させていただきます。

予定納税も源泉徴収も似た仕組みで、どちらも所得税を前もって納める点は同じですが、性格は異なります。

源泉徴収は、報酬や給与を支払う側(会社や取引先)があらかじめ税金を差し引いて、本人に代わって納める、いわゆる天引きの仕組みです。これに対して予定納税は、前年の税額をもとに、本人が7月と11月に自分で前払いする仕組みです。

源泉徴収された分も、予定納税で前払いした分も、最終的にはその年の確定申告でまとめて精算されます。

なお、予定納税の基準になる前年の税額は、源泉徴収された分を差し引いた後の金額です。そのため、報酬の多くが源泉徴収されている方は、予定納税の対象にならないこともあるということを知っておいていただければと思います。

「減額申請」で予定納税を減らせる場合があります

今年の見込みの所得税額が、予定納税基準額(前述の「前年の所得税額」ですね)を下回ると見込まれる場合には、減額申請という手続きができます。申請して税務署に認められれば、予定納税額を減らしてもらえます。

減額申請の対象になりやすいのは、たとえば廃業や休業、失業、業況不振で売上が大きく落ち込んでいる場合や、災害・盗難などで損失が出た場合、医療費控除や各種の所得控除・税額控除が前年より大きく増える見込みの場合などです。

また、同一生計の配偶者や扶養親族が増えたことで控除が増える場合も対象になります。

【小林コメント】

小林税理士

殆どの方は、通知が来たら、その金額をそのまま払っておられると思います。ただ、業績が明らかに落ちている年には、資金繰り的にはもちろん厳しいと思いますので、減額申請という選択肢を知っておいてほしいです。

去年より売上がかなり下がっている場合は、今年の見込みで税額を試算し、減額申請を検討してみる価値があると思います。

第1期分と第2期分で、期限と「現況日」が違います

減額申請には、いつ時点の状況で見積もるか(現況日)と、いつまでに申請するか(提出期限)が決まっています。そして、第1期分と第2期分で、その日付が異なります。

少し実務的な内容になりますが、第1期分(第2期分もあわせて減らしたい場合を含みます)は、その年の6月30日時点の現況で今年の税額を見積もり、7月15日までに申請します。

第2期分だけを減らす場合は、10月31日時点の現況で見積もり、11月15日までに申請します。

いずれも、期限が土日祝にあたる場合は翌開庁日になります。

2026年は11月15日が日曜のため、翌開庁日の11月16日が第2期分の申請期限です。

大切なのは、7月の第1期の期限を過ぎてしまっても、秋にもう一度、第2期分だけを減額申請できるという点です。

夏の時点では判断がつかなくても、10月末の状況を見て業績の下振れがはっきりしたら、そこで申請できます。

わかりにくい内容も多いので、ご不安な方は、顧問税理士など詳しい方にご相談されると良いと思います。もちろん、当事務所でもご相談への対応をさせていただいております。

【小林コメント】

小林税理士

気づいたときには7月の第1期の申請期限を過ぎてしまっていたと、そこで諦めてしまう方もいらっしゃると思いますが、そのような場合でも、10月31日時点で業績が下がっていれば、11月の第2期分で減額申請ができます。

前年に比べて業績が落ちる予想をされている事業者の方は、実務面の詳しい内容が分からなくても、秋にもう一度減額申請できるチャンスがあるということだけでも、ぜひ覚えておいてほしいと思います。

申請書の準備と書き方の流れ

減額申請には、「所得税及び復興特別所得税の予定納税額の7月(11月)減額申請書」という書類を使います。

国税庁のホームページから入手でき、e-Taxで作成・提出することもできます。

こちらに書式があります。

申請書には、減額を求める理由を具体的に書くとともに、今年の申告納税見積額の計算を記入します。

今年の所得の見込み、所得控除や税額控除の見込み、源泉徴収された税額の見込みなどをもとに、今年の税額を見積もる形です。

それに併せて、その計算の基礎となる事実を記載した書類(損益の見積りなど)を添付します。

提出先は所轄の税務署で、持ち込み・郵送・e-Taxのいずれでも可能です。

見積もりの根拠がしっかりしているほど、申請は通りやすくなります。日ごろから帳簿を整えておくと、現況日での見積もりがすぐに出せて、申請もスムーズです。

【小林コメント】

小林税理士

見積もりの根拠があいまいだと、申請が認められにくくなります。

普段から記帳を続けておくと、現況日の時点でも今年の見込みがすぐに出せて、申請の準備が楽になります。

ここでも、日々の帳簿づけの習慣が効いてきます。当事務所でも顧問契約のお客様に、月々手厚いサポートを行っておりますので、ご興味のある方はぜひこちらもご確認いただけると嬉しいです。

ドリカムな月次決算

申請するときの注意点

減額申請をすると、承認か却下かが書面で通知されます。

ここで気をつけていただきたいのは、申請したからといって納期限は動かないという点です。承認される前に納期限が来る場合や、申請が却下された場合でも、本来の金額を納期限までに納めていれば、延滞税はかかりません。申請中だからと納付を止めてしまわないようご注意ください。

また、減額はあくまで前払いの負担を今年の実態に合わせる手続きであって、納める税金の総額が減るわけではありません。

最終的にはその年の確定申告で精算されます。

資金繰りを楽にするための手続きだとお考えいただくのがよいと思います。なお、申請書の様式や名称は税制改正で変わることがありますので、手続きの際は国税庁ホームページで最新の様式をご確認ください。

よくあるご質問

Q. 申請すれば、必ず減額してもらえるのですか。

小林税理士

見積もりが認められれば承認され、認められなければ却下されます。いずれも書面で通知が届きます。却下された場合でも、本来の金額を納期限までに納めていれば延滞税はかかりませんので、申請中も納付の期限には注意してください。

Q. 7月の第1期分の期限を過ぎてしまいました。もう減額はできませんか。

小林税理士

第2期分だけであれば、10月31日時点の現況で見積もり、11月15日(2026年は翌開庁日の11月16日)までに申請できます。夏に間に合わなくても、秋にもう一度チャンスがあります。

Q. 減額申請をすると、その年の税金そのものが安くなるのですか。

小林税理士

いいえ、安くはなりません。減額申請は前払いの金額を今年の見込みに合わせて減らす手続きで、納める税金の総額はその年の確定申告で精算されます。税額が安くなるわけではありませんが、前払いの負担が軽くなるため、資金繰りは楽になります。

Q. 自分で今年の税額を見積もるのが不安です。

小林税理士

前年の申告書と今年の帳簿をもとに見積もることになります。判断に迷う場合は、所轄の税務署や税理士にご相談ください。当事務所でも、見積もりから申請書の作成までお手伝いしていますのでお気軽にご相談ください。

まとめ

予定納税は前年の実績で決まるため、今年の業績が下がった年には負担が重く感じられます。

そんなときは、今年の申告納税見積額が予定納税基準額を下回る見込みであれば、減額申請で予定納税額を減らせる場合があります。

第1期分は6月30日の現況で7月15日まで、第2期分は10月31日の現況で11月15日まで(2026年は翌開庁日)と、期限と現況日が分かれている点を押さえておいてください。

減額はあくまで前払いの調整で、総額は確定申告で精算されますが、業績が落ちた年の資金繰りを守る大切な手段となり得ます。

減額申請ができそうか、今年の見込みをどう立てればよいかなど、迷われたときはぜひ当事務所までお気軽にご相談ください。

初回はLINEやZOOM、チャットワークでご相談対応、遠隔地でも問題なく顧問契約もお引き受けさせていただいております。

投稿者プロフィール

監修者 小林暢浩(税理士小林ノブヒロ事務所 代表税理士)
監修者 小林暢浩(税理士小林ノブヒロ事務所 代表税理士)
中小企業の経営者様の「一番身近で頼りになるパートナー」として、税務・会計を軸にしながら「お金に関する様々なお悩み」に幅広く寄り添うサービスを展開。
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