昨今、エネルギー価格の高騰が家計を圧迫していますが、夏の電気料金の請求が始まる頃に、「小林先生、自宅でがっつり仕事をしているのですが、エアコン代や家賃はどこまで経費にできますか?」というご相談が増えてきます。

それだけ電気料金の高騰は頭の痛いところでもありますが、「どこまで経費で落とせるか?」は事業者様の関心の高い問題です。

自宅兼事務所で働く方にとって、家賃や光熱費、通信費は、仕事にもプライベートにも使う費用です。この事業とプライベートが混ざった費用を、事業で使った割合だけ経費にする考え方が「家事按分」です。

本記事では、家事按分とは何か、白色申告でも使えること、何をどんな基準で按分するのか、そして根拠の残し方までをお話しします。

家事按分とは、事業で使った分だけを経費にすることです

家事按分とは、自宅兼事務所などで、事業とプライベートの両方に使っている費用を、事業で使った割合に応じて経費にすることをいいます。仕事とプライベートが混ざっているため、全額を経費にすることはできませんが、事業で使った部分は経費にできます。

対象になりやすいのは、家賃や地代、電気・ガス・水道といった光熱費、スマートフォンやインターネットの通信費、車を仕事に使っている場合の車両関連費などです。

なお、家事按分は個人事業主やフリーランス特有の考え方で、基本的に法人にはないとお考えいただければと思いますが、一人社長の法人等では、実質的に「家事按分」のような形で自宅や私用車を会社と共有する事例が非常に多く存在しています。

【小林コメント】

小林税理士

「自宅の家賃は全部経費にできますか」と聞かれることがありますが、それはできません。事業で使った分だけです。

逆に、「自宅だから経費にはできない」と思い込んで、何も計上していないのはもったいないです。

事業で使っている部分は、きちんと按分すれば経費にできます。

一般的には面積比や時間比で事業用と家事用に分けて按分することが良く、例えば、ご家族の人数比での按分などは、事業とプライベートの境目が明確でなく分かりにくいため、税務署から否認されやすい傾向にあります。

個別の事情がありますので、より詳しくご自身の状況を判断したいお知りになりたい方は、当事務所までご相談ください。

白色申告でも、家事按分はできます

次に、よくある誤解に、「白色申告だと家事按分はできない」「事業で使う割合が50%を超えないと経費にできない」というものがあります。ですが、これは正確ではありません。

所得税法施行令の定めでは、白色申告の方でも、家事関連費のうち業務に必要な部分を明らかに区分できる場合には、その部分を経費にできます。

さらに国税庁の通達では、業務に必要な部分が50%以下であっても、その必要な部分を明らかに区分できるなら経費に算入して差し支えない、とされています。青色申告の方は、取引の記録などにもとづいて業務上直接必要だった部分を経費にでき、扱いがやや柔軟です。

つまり、白色でも青色でも、「事業で使った部分を、合理的な基準で区分して、根拠を残す」ことができれば、家事按分は認められます。申告の種類で按分できるかどうかが決まるわけではありません。

【小林コメント】

小林税理士

「自分は白色だから自宅関連は経費にできない」と思い込んでいらっしゃる方もおられるかも知れません。青色でなく白色でも、事業で使った部分の根拠を示せれば、家事按分はできます。

ここは誤解の多いところですので、ぜひ知っておいていただきたい点です。

ちなみに、国税庁の「青色申告制度の意義と今後の在り方」の資料からも、青色申告者は全体の50%台で横ばいということで、それ以外の白色申告事業者もかなりの割合でおられます。ご参考までに。

何を、どんな基準で按分するか

さて、家事按分では、費用ごとに「何を基準に事業分を計算するか」を決めます。

大切なのは、ざっくり「だいたい半分」とするのではなく、面積や時間、距離など、数値で説明できる基準を選ぶことです。

家賃や地代であれば、事業に使っている部屋の床面積の割合や、使用している時間の割合で分けるのが一般的ですね。

電気・ガス・水道などの光熱費は、使用している面積や作業時間などをもとにします。通信費は、業務で使う時間や日数の割合で、車両関連費は、走行距離や使用日数の割合で按分するのが分かりやすい方法です。

大切なのは「合理的な基準」と「根拠の記録」

家事按分でいちばん問われるのは、その割合にどんな根拠があるか、という点です。税務署に説明できる合理的な基準を選び、その計算の根拠を残しておくことが欠かせません。

たとえば、家賃を床面積で按分するなら、部屋の間取り図に事業で使っているスペースを示しておく、使用時間で按分するなら、その作業時間の記録を残しておく、といった形です。

基準は毎年同じものを使い、途中でむやみに変えないことも大切です。あわせて、領収書や請求書もきちんと保管しておきましょう。

【小林コメント】

小林税理士

税務調査で問われるのは、多くの場合「その割合の根拠は何ですか」という点です。

間取り図に事業スペースを示しておく、作業時間をメモしておくなど、あとで根拠をきちんと説明できる形にしておくと安心です。

日々の記帳と同じで、普段のちょっとした一手間が、いざというときに効いてきます。

見落としやすい注意点

家事按分では、いくつか見落としやすい点があります。まず、生計を一にする配偶者や親族に支払う家賃は、経費にできません。

たとえば自宅が配偶者名義で、そこに家賃を払っている形にしても、その家賃は経費になりません。ただし、その家屋にかかる固定資産税や減価償却費などは、事業で使う割合分を経費にできる場合があります。

また、持ち家の場合は家賃が発生しないため、按分の対象になるのは、建物の減価償却費や固定資産税、住宅ローンの利息部分、火災保険料などです。

住宅ローンの元本部分や土地は対象になりません。さらに、持ち家で事業に使う割合が大きくなると、住宅ローン控除が減ってしまうことがあります。節税のつもりが控除を減らしてしまわないよう、事業割合とのバランスにも注意が必要です。

よくあるご質問

Q. 家賃は何割まで経費にできますか。

小林税理士

決まった割合はありません。事業に使っている部屋の床面積や使用時間など、合理的な基準で計算します。大切なのは「何割にしたか」よりも「なぜその割合なのか」という数値の根拠です。

Q. 白色申告でも家事按分はできますか。

小林税理士

できます。業務に必要な部分を明らかに区分できれば、白色申告でも経費にできます。必要な部分が50%以下であっても、明らかに区分できるなら経費に算入して差し支えないとされています。

Q. 持ち家でも経費にできますか。

小林税理士

家賃は発生しませんが、建物の減価償却費や固定資産税、住宅ローンの利息部分、火災保険料などを、事業で使う割合分だけ経費にできます。ただし住宅ローン控除との関係に注意が必要です。

Q. どんな記録を残しておけばよいですか。

小林税理士

間取り図と事業で使っている面積、使用時間の記録、領収書や請求書などです。按分の基準は毎年同じものを使い、根拠を説明できる形で残しておくと安心です。

まとめ

家事按分は、自宅兼事務所などで事業とプライベートが混ざった費用を、事業で使った割合で経費にする考え方です。

白色申告でも青色申告でも、合理的な基準で区分して根拠を残せば認められます。家賃は床面積や使用時間、光熱費は面積や時間、通信費は使用時間、車両費は走行距離といった、数値で説明できる基準を選ぶことがポイントです。

いちばん大切なのは、その割合の根拠を残しておくことです。あわせて、生計を一にする家族への家賃や、持ち家と住宅ローン控除の関係といった見落としやすい点にも気をつけてください。

自分の場合はどこまで経費にできるのか、どんな基準が妥当か、迷われたときは当事務所までお気軽にご相談ください。初回はLINEやZOOM、チャットワークでご相談対応、遠隔地でも問題なく顧問契約もお引き受けさせていただいております。

投稿者プロフィール

監修者 小林暢浩(税理士小林ノブヒロ事務所 代表税理士)
監修者 小林暢浩(税理士小林ノブヒロ事務所 代表税理士)
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