
毎年12月が近づくと、「今年、何か節税でできることはありませんか」というご相談が一気に増えます。ただ、年末に慌てて動こうとすると、選べる手はどうしても限られてしまいます。今回ご紹介する共済制度も、前記事の中間決算のところで触れたように、秋のうちから考えておくほうが、ずっと落ち着いて判断できます。
よく取り上げられるのが、小規模企業共済と経営セーフティ共済という2つの制度です。名前は似ていますが、性格はまったく異なります。まずはその違いから整理してお伝えしてまいります。
まず押さえたい、2つの共済の違い
小規模企業共済は、「経営者自身の退職金づくり」の制度です。掛金は経営者個人の所得から支払い、その全額が所得控除になります。
一方の経営セーフティ共済(正式には中小企業倒産防止共済)は、取引先の倒産に備えるための制度で、掛金は事業の損金や必要経費になります。
つまり、控除される場所が異なります。小規模企業共済は個人の所得から差し引かれ、経営セーフティ共済は事業の経費になり、この違いがわかると、ご自身にどちらが合うかが見えてきます。どちらも運営しているのは、国の機関である中小企業基盤整備機構です。

小規模企業共済のポイント
小規模企業共済の掛金は、月額1,000円から70,000円までの範囲で、500円単位で自由に決められます。年間では最大84万円になり、この全額が「小規模企業共済等掛金控除」として所得から差し引かれます。1年以内の前納分も同じように控除の対象です。
注意点としましては、この掛金は経営者個人が負担するものなので、事業の経費や損金にはできないというところです。また、加入から20年(240か月)未満で自己都合により解約すると、受け取る金額が払い込んだ掛金の合計を下回る、いわゆる元本割れになるというリスクも存在します。長く続ける前提の制度だと理解しておいてください。

【小林コメント】

小規模企業共済は「入って終わり」ではなく、いつ・どの事由で受け取るかまで見ておきたい制度です。廃業や退任、老齢給付で受け取る場合は退職所得として扱われ、税制上とても有利になります。
弊所では、入口の節税だけでなく、出口の受け取り方まで一緒に考えるようにしています。むしろ受け取り方のほうを契約時から考えておくことが重要だと考えています。
経営セーフティ共済のポイント
経営セーフティ共済の掛金は、月額5,000円から20万円までの範囲で、5,000円単位で決められます。掛金は全額が損金または必要経費になり、掛金の累計が800万円に達するまで積み立てられます。前納の制度を使えば、最大で240万円分を年内にまとめて計上することも可能です。40か月以上納めれば、解約したときに掛金が全額戻ってくる仕組みになっています。
ここでも必ずお伝えしているのが、出口の話です。解約して受け取るお金は、その全額が収益(益金)として扱われ、その年の課税対象になります。つまり、入るときに経費にした分を、出るときにまとめて取り戻される形です。利益と同じ扱いになります。
何も準備せずに解約すると、その年の利益が急に膨らんで思わぬ納税額の増加につながります。

【小林コメント】

解約時に全額が益金(税務上の利益のことです)になることを知らずに加入され、いざ解約した年に利益が跳ね上がって、渋々納税したというケースも見てきました。
大きな設備投資や赤字予想の年に合わせて解約を計画するなど、出口の設計が非常に重要です。逆に、赤字が想定されたり、将来の設備投資の準備として活用すると、この制度は本当に頼りになる制度だと思います。
入るときは、必ず出口まで見ておくのが経営セーフティ共済を活用するポイントです。
秋のうちに準備しておくとよい理由
これらの制度を年内の節税に活かすには、掛金の払い込みや前納をその年のうちに済ませておく必要があります。手続きには一定の日数がかかりますし、資金繰りとの兼ね合いも見なければなりません。決算前の12月に駆け込むより、秋のうちに「いくらまでなら無理なく掛けられるか」を見ておくほうが、はるかに落ち着いて判断できます。
中間決算などで今年度の着地が見えていれば、掛金の金額も現実的に決められまし、数字を見ながら、資金繰りに合った掛け方を考えることもできます。
中間決算について
中間決算と上半期の着地の見方について、以下の『中間決算のすすめ』の記事をご覧ください。
上半期を振り返る「中間決算」のすすめ|年後半の打ち手を決める前に
9月に入ると、私のところにも「そろそろ今年の着地はどうなりそうか、一度見ておきたい」というご相談が増えてきます。 年度が1月から12月の個人事業主の方も、3月決算・9月決算の会社も、ちょうど一年の真ん中あたりを過ぎるのが […]

よくあるご質問
Q. 2つの共済は両方に入れますか。

入れます。目的も控除される場所も異なるため、併用しても問題ありません。経営者個人の備えとして小規模企業共済、事業の備えとして経営セーフティ共済、という組み合わせはよくある形です。
Q. いくらまで掛けるのがよいですか。

節税効果だけを見て上限まで掛けたくなりますが、いちばん大切なのは資金繰りです。無理なく続けられる範囲で決めるのが基本です。今年の着地見込みと手元資金を見ながら、現実的な金額を決めることが大切です。
Q. いつ解約すると得ですか。

制度によって考え方が異なります。小規模企業共済は退職・廃業など有利な事由での受け取りを、経営セーフティ共済は解約時に益金が出ても影響の小さい年を選ぶことがポイントです。出口の設計は事前のご相談をおすすめします。
まとめ|制度の性格を知り、資金繰りに合わせて使う
小規模企業共済も経営セーフティ共済も、正しく使えば頼りになる制度です。大切なのは、それぞれの性格を理解したうえで、無理のない範囲で、出口まで見据えて使うことです。年末に慌てないためにも、秋のうちに一度、貴社に合った使い方を検討してみてください。
無料相談のご案内
共済の掛金の決め方や、出口を見据えた設計について、いつでもご相談ください。初回のご相談は60分無料です。ZOOMによる全国対応可能です。貴社の資金繰りに合わせて、無理のない使い方を一緒に考えさせていただきます。
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中小企業の経営者様の「一番身近で頼りになるパートナー」として、税務・会計を軸にしながら「お金に関する様々なお悩み」に幅広く寄り添うサービスを展開。
特に、経営者様が安心して本業に専念できる環境づくりと信頼関係の構築には定評がある。千代田区、文京区、神田地区を中心に地域に密着したサポートを提供している。
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